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(連載小説)憑依の研究 第8話 憑依カウンセリング


(柔らかかったな…)

自分の部屋でベッドに転がり、渓子の体の感触を俺は思い出す。
相棒の段取りの中での慌ただしい憑依体験だったが、かえって良かったような気がする。

(あんな体験をしたら舞い上がって暴走してしまうのも分かるよな)

俺は自宅から霊体で行ける範囲の住人について思い出す。
憑依してみたいと思える若くて綺麗な女性がその中にはいない。
それに相棒の話だと、寝ている人間に憑依しても、体も意識も睡眠状態なので意味が無いらしい。

(仕方ない、やはり学校が最高の憑依環境ってことなんだな…)


興奮して良く寝れない夜を過ごした俺は、居ても立ってもいられなくなり、普段より相当早く登校する。
誰もいないか…と思っていたが、早朝練習組がちらほら見かけられた。
俺は早速、幽体離脱して校内を徘徊し始める。

(お、あれは!)

廊下を移動していると、白衣を着た女性の後姿をとらえた。
早朝組のケアのために早めに登校しているのであろう綾香先生だった。
俺は彼女の後を追い、保健室に忍び込む。
そして椅子に座って机の上の書類に目を向けた先生の背後に忍び寄る。

(先生、ちょっと体を借ります)

霊体の拳を振り上げると、先生の腹部に思念を乗せたパンチを打ち込む。

「!」

声にならない悲鳴を挙げて、綾香先生は目を開けたまま気絶して机につっぷす。
すかさず俺は先生の体に覆い被さり、中に入っていく。
視界が切り替わり体を起こすと、自分の手をしばらく見つめた後、その手を自分の胸に当てる。

(これだよ、これ!)

そこにある柔らかい膨らみに、俺は猛烈に感動する。
渓子のものより大きさと柔軟性に勝る胸の感触を楽しみながら立ち上がると、部屋にある姿見の前まで歩いていく。

「やっぱり凄いな、本当に綾香先生になってる…」

鏡の中の美人教師が感動した様子でこちらを見ていた。
微かに躊躇ったものの、俺は決断をする。

「綾香先生の裸…見たい!」

昨日の渓子の時はじっくりと眺めることができなかったし、目の前にあるのだ、逃すのは勿体ない。
前に見た妙穂先生のストリップを思い出す。

「本人に成りすましたほうが色々と良さそうだな…よし!」

渓子に成りすました時の感覚を思い出し、綾香の意識に潜り込む。

「俺の名前…綾香…俺は平井木綾香…」

綾香先生の記憶を辿りながら呟く。

「…24歳…養護教諭…彼氏が欲しいけど忙しくて無理…最後のは言ってて悲しくなるけど、私は平井木綾香になれたみたいね」

鏡の中の自分の姿を見ても、先程までの違和感がない。

(じゃあ早速…)

そう考えて、白衣に手を掛けた時だった。

コンコン

ドアがノックされた。
俺は慌てて自分の手を引っ込めて、ドアに目を向ける。

「…綾香、入っていいかしら?」

妙穂先生の声だった。
俺は慌てる自分を一度落ち着かせ、声を出す。

「どうぞ」

ドアを開けて妙穂先生が入ってくる。

「忙しいのにゴメンね、今大丈夫?」

「え?ええ、大丈夫よ。こんなに朝早くから来るなんて珍しいじゃない、どうしたの?」

「実は相談したいことがあって…友人としてよりも、カウンセラーとして聞いて欲しい事なんだけど…」

「…分かったわ、そのつもりで対応するわ。とにかく座って」

妙穂先生に椅子を勧めながら、自分も机の椅子に座る。

「…最近、どうもおかしいのよ」

表情を曇らせながら妙穂先生が切り出す。

「おかしいって?具体的に話してみて」

想像は付くが一応尋ねる。

「例えば昨日の午後の授業なんだけど、『授業をした』記憶はあるんだけど、自分が言った内容が夢の中の出来事のようにハッキリと思い出せないの、まるで別の自分が言ってたみたいに」

「…」(やはりそのことか)

「その前の日も放課後に居眠りしたみたいで、その時にも変な夢を見たの」

「どんな夢?」

「…生徒の前で裸になってオナニーする夢…」

顔を真っ赤にして正直に話す妙穂先生。

(はっきりと記憶に残ってる感じではないみたいだけど…。真面目な性格だから気になるんだな…。さて、どうするか)

綾香先生の意識を表に出して対応させる事も考えたが、やめておく。

(どう取り繕っても『気にするな』の一言に落ち着くんだよな。だったら妙穂先生には悪いけど、ちょっと楽しませてもらおう…)

「…わかったわ、じゃあいくつか質問するから正直に答えてね」

「ええ」

「今、付き合っている人はいるの?」

「…いないわ」

「オナニーはどのくらいの頻度でやってるの?」

「なんでそんなこと聞くのよ!関係ないでしょ!」

「いいから答えて。大事なことなの」

「…週に1回くらい…」

顔を真っ赤にして、正直に答える妙穂先生が可愛らしかった。

「ふーん、なるほどね…」

「ねえ、こんなこと聞いて何が分かるの?」

「…欲求不満ね」

「え?」

「あたしたちみたいな女盛りが、彼氏もなしに仕事一筋なのよ?欲求不満が溜まらない方がおかしいわ」

「…そうかしら?」

「おそらくストレスから逃れるために、別の自分が授業をしたように感じたり、生徒に性的な衝動をぶつける夢を見たのだと思うわ」

「…なるほど…」

「結論としては、自分で無意識にストレスを発散させようとしてるのだから、『気にしない』のが一番だと思う」

真面目な顔で答えた後に表情を崩して少しふざけてみる。

「それとも、毎日オナニーしてみる?」

「馬鹿!!でも…そうよね、気にしても仕方ないかもね」

当面の火消しを終えて、俺は思いついたことを実行してみる。

「それと夢に出てきた生徒のことなんだけど、その子の事、どう思ってるの?」

「どう?って言われても…うちのクラスの生徒よ?ただそれだけだわ」

(…まあ、そうなんだろうな…。でもそれじゃあ面白くないから…)

「これはあたしの想像なんだけど、あなたが無意識のうちに気になっているのだと思うわ」

「え?」

「だって考えてもみてよ、夢の中とはいえ、全然好意のない人の前でオナニーなんかすると思う?」

「…言われてみれば、そうかもね…」

「だから、そうね…ちょっと意識してその子に接してみるのも良いかもよ?ストレスの発散という意味で」

「う~ん、そうなのかな?」

あまり納得がいってない様子の妙穂先生。なので一歩引いてみる。

「まあ、強く勧めることじゃないから、そんなに気にしないでいいわ。本人の気持ちが大事なことだから」

「うん、分かったわ。とにかく相談に乗ってくれてありがとう、気分が楽になったわ」

「いえいえ、どういたしまして。あと相談には乗ったけど、プライベートなことだし、私も忘れることにするね。それでいいでしょ?」

綾香先生本人にしてみれば元から記憶にないだけなのだが、あとから聞き返されても不味いので、念のためのフォローを入れておく。

「ええ、そうね、気遣いありがとう」

そう言って妙穂先生は立ち上がると部屋を出ていった。
時計を見るとかなりの時間が立っていた。

「あ!もうこんな時間…仕事は…残ってるのね。残念だけどこの体はもう開放しないといけないわ」

名残惜しく自分の胸をしばらく揉むと、椅子に座り、霊体の俺は綾香先生から抜け出す。
『起きて』と念じながら軽く先生の霊体を叩くと、ハッとしたように先生の体が意識を取り戻す。

「居眠りしてたのかしら?誰か居たような気もするけど…。あ、もうこんな時間なの!?急がないと」

そして机の上の書類と格闘を始める。
その様子を確認して、俺は保健室を後にした。


その日の国語の授業中、俺と目が合った妙穂先生が慌てて視線をそらし、わずかに顔を赤くする場面が何度かあった。

(とりあえず悪い気はしないな。こんなことから恋愛に発展するとかあるのかな?)

そんなことを考えながら、俺は気分よく授業を受けることが出来たのだった。
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コメント

No title

今回も楽しませて頂きました。

夜明けの街さんの憑依描写は秀逸ですね。

私も憑依小説をTS解体新書さんのお祭りに寄稿させて頂いた事があるのですが、憑依の場面がどうにも上手く書けなかったんですよ。

この後どんな物語が展開されるのかとても楽しみです。

> 今回も楽しませて頂きました。
>
> 夜明けの街さんの憑依描写は秀逸ですね。
>
> 私も憑依小説をTS解体新書さんのお祭りに寄稿させて頂いた事があるのですが、憑依の場面がどうにも上手く書けなかったんですよ。
>
> この後どんな物語が展開されるのかとても楽しみです。

コメントありがとうございます。
自分だけにしか分かっていない表現になっていないか不安なこともありますが、ちゃんと伝わっているようで安心しました。
これからもよろしくお願いします。

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