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(連載小説)憑依の研究 第4話 妙穂モドキ

ここまでくると流石に疑いようがなかった。
妙穂先生の体は用務員の霊体に乗っ取られているという事実を。
いや体を乗っ取られているだけでなく、記憶や意識、そして教師という立場まで玩具にされて遊ばれているのだ。
これ以上好き勝手にやらせることに我慢出来なくなった俺は自分の体に戻るとダッシュで目的地に向かう。
そして自分の胸を楽しそうに揉みながら歩く妙穂先生を用務員室の手前で見つけた俺は、勢いのまま声を掛けた。
「先生!」
思わずそう呼び掛けて、俺は考え直す。
(見た目に騙されるな。こいつは妙穂先生に成りすましているだけの『妙穂先生モドキ』だ!)
慌てて自分の手を引っ込めて振り返った先生モドキは、俺の姿を確認して露骨に嫌な顔をする。
「また君なの!どうして君は私が楽しんでいる時にいつも邪魔を…」
そこまで言って何かに気づいたようにハッとした妙穂モドキは、取り繕うように笑顔を見せる。
「…ううん、こっちの話だから気にしないでね。それでどうしたの?尾畑君。そんなに慌てて」
「ちょっと話があるんですが」
「…ごめん、先生、今、忙しいの。また今度に…」
そこまで言って何か思いついたように考え込み、悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべると、さっきの言葉を取り消す。
「そういえば私も君に大事な話があったのを思い出したわ」
俺たちは黙って側にあったベンチに座った。
モドキのほうから話を切り出してきた。
「話というのは、用務員の木乃池さんのことなの」
一体何を言い出すんだとあっけにとられていると先生モドキは真剣そうに話を続ける。
「木乃池さんのこと良く知ってるけど悪い人じゃないわ。それで私、考えたんだけど、実は君の方が先に手を出したんでしょ?」
内容についていけずに黙っていると追い打ちをかけてくる。
「だから、校長先生に君の口からそう伝えてほしいの。自分で言いにくいのだったら私が代わりに言ってあげるから、ね?悪いようにはしないわ」
俺が黙っているのを了承と受け取ったのか、当然のことのように笑みを浮かべながら立ち上がる。
「じゃあ今から行きましょ、さあ」
「ふ・ざ・け・る・な!」
俺の突然の拒絶に慌てる女教師モドキ。しかし、すぐに悲しそうな顔を作る。
「君がそんなことを言うなんて、先生、本当に残念だわ」
こんな茶番に妙穂先生が玩具のように使われていることを改めて認識して、俺の怒りに火が付き、強い口調になる。
「俺には分かるんだ!あんた、妙穂先生じゃないだろ?先生の体を乗っ取ってなりすましているんだろ!」
「!」
驚いた妙穂モドキは一瞬だけ俺を睨むが、すぐに申し訳なさそうな顔を作る。
「…ごめん、君の言っていることが全く分からないわ。私は君のクラスの担任の椎木妙穂よ?それは間違いないでしょ?」
あえて咎めずに心配しているような雰囲気を出して俺を動揺させようとしているのだろう。
もし確証がなかったら折れていたかもしれない。
俺が黙っていると言葉を続ける。
「そういえば君、入院してたのよね?後遺症かもしれないわ。急いで保健室に行きな…って、あれ?」
妙穂モドキは何かに気づき考え込む。
「…もしかして、君もできるの?」
ボソリと問いかけてくる。
『何が』かは俺達には分かっている。
冷静に考えて、このまま問答をやりあっててもシラを切られ続ければ意味のないことに気付き、俺は頷いた。
「ふふふ、そういうことだったのね…」
愉快そうに笑いだす美人教師モドキ。
「…あはは…ひひひ…ぎゃはは!」
上品な笑いが下品なものに変わっていくにつれ、先生の体が纏うオーラのメッキが剥がれ、青色に変わっていく。
「なんだお前も出来るようになったのかよ。だったら最初から言えよ」
相変わらず声だけは先生のものなのだが、口調や話の中身は完全に男のものになっている。
その急な変化に俺が戸惑っていると、妙穂モドキは自分の胸を遠慮なく揉みながら提案する。
「当然、俺の正体は分かってるんだよな?ま、ここじゃなんだから、部屋に入ろうぜ」
俺たちは用務員室に向かって歩き始めた。
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